澤田先生のインタビュー 新技術の導入と雇用

2018年5月1日付けの『日本経済新聞』には本プロジェクトの分担者である澤田康幸先生による記事が掲載されました。
「経済教室」というコラムに載せられた記事の題名は「所得・需要増大の恩恵大」です。
記事では、澤田先生がチーフエコノミストを務めるアジア開発銀行 (ADB) 出版の "Asian Development Outlook"(『アジア開発の展望』)の特集、「いかに技術が雇用に影響を与えるか」でまとめられた分析が議論の主軸になっています。
澤田先生は、コンピューター制御による自動化に伴い米国で半分近くの仕事が削減されるおそれがあるという推定結果を示したイギリス・オクスフォード大学の専門家の研究に対し、アジアでは過去25年間において技術の進歩と生産性向上により、3千万人の雇用が創出され、賃金も継続的に上昇しているため、貧困率が5割以上から1割以下へ大幅に低下していると指摘しています。その理由として、アジアの製造業のほぼ3割を占める食料・繊維・衣料セクターでロボット導入が現在大きく進んでおらず、人間が機械に置き換えられていないこと、新技術の導入が新しいタイプの雇用を生み出していること、及び経済発展に伴い消費市場の拡大していることを挙げています。それに加え、今後新技術がもたらす恩恵をすべての労働者に届けるためには各国の政策決定者による将来を見据えた取り組みが必要であると論じています。具体的には、教育、雇用と労働及び租税という三つの分野における政策であり、必要なのは、技能教育や生涯学習の推進、労働規制の緩和、及び課税ベースの拡大や実効性のある所得再分配に関する政策だということです。(『日本経済新聞』2018年5月1日、日刊、17面)。