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「くらしと健康の調査」(JSTAR)

 本研究において目指すNTAの根本的改善の為の主要なデータベースの1つとなるのがJSTARである。人々はそれぞれの事情、例えば配偶関係、子供や介護すべき親の状況、所得や資産、自分の認知や健康状態などの下で、消費・貯蓄・労働供給・社会参加の意思決定を行っている。そのような人々の行動様式に対する本質的な理解を深めるためには、個人に関する包括的パネルデータが必要であると国際的に認識されている。米国は1992年から、他国に先んじてパネルデータHealth and Retirement Study (HRS)の構築を進め、世界的な分析をリードしている。市村・清水谷・橋本はこのような世界的な大きな流れの中で、2007年から日本初の中高年に対する世界標準パネル調査であるJSTARを開始した。JSTARは初回50--75歳の男女のコーホートを2年おきに追跡調査し、国際比較可能な解析フレームの中で、経済、健康、就業、家族、社会参加といった生活の多面的な諸側面に関するデータを収集する学際的・国際的・縦断的プロジェクトである(RAND研究所プロジェクトとしてこれらのパネルデータ構築メンバーが協力して、データを国際比較可能にする努力を続けてきた(https://mmicdata.rand.org/megametadata/

 JSTARの成果はScience (2010)で引用され、米国National Academy of Sciencesのアジアの高齢化対応を解説した報告書(2012)に紹介されるなどすでに国際プロジェクトの一翼を担っており、日本の高齢化の経験を定量的に解析し、世界共有のデータを提供するプロジェクトとして海外からも非常に期待が高い。JSTARとNTA指標を組み込んだアプローチとしては、わが国の遺産額を推定したSanchez, Ogawa, and Matsukura (2013)などがあり、また、ブラジルで日系移民の引退行動の特異性と日本国内の高齢者との同質性を分析した結果を2014年の米国人口学会で発表した。